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こころが動くまで待たなければ 音楽は生まれない

2023.01.14

「音楽ってなんだろう」②
※「このコラムは2003~2005年にかけてメルマガとして配信をしたものです。
当時の私の音楽観を述べたものですが、自分自身の考えはあまり変化していないため、
基本的にそのまま掲載をしています。その視点でお読みください」

■今日のバイブレーション■

     こころが動くまで待たなければ 音楽は生まれない
           (エミール・ダルクローズ:リトミック創案者)
                      
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●今日のバイブレーションから思い浮かんだ事●
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 こころと身体の関係について触れた名言は数多い。
その中でも、この言葉が僕自身の音楽活動に与えた影響は大きい。10年ほどの
演奏活動のあと、所属していたグループが、
オイルショックの影響で仕事が激減。やむなく解散という事態となった。
今から30数年前の話である。

 ソロ活動をするほどの力があるとは、どうしても思えなかったので、自宅の
すぐ近くに事務所を構えて、音楽事務所兼音楽教室を開く事を思いたった。
その中核に据えたのが、上記、
ダルクローズの考えた「リトミック理論」である。

 音楽教育には全く門外漢であったものの、「なにが人を音楽にかりたててい
るのか」を考えることは、非常に興味があったので、やおら音楽関係の書物を
むさぼるように読み始める時期となった。

こどもたちが音楽体験をする機会として、全く新鮮な理論体系を求めていた。

わらべうたを利用したコダーイシステムや、演劇との一体化を志向したドラマ
ティックス、ムーブメントエデュケーション、オルフ、シュタイナー教育など
魅力的な手法に出会いつつも、教室のスペースなどを考慮して、最終的に取り
入れることを決断したのが、リトミックであった。

 リズムの形成に重きをおきつつ、同時にこころの育成を音楽で図ろうとする、
極めて僕好みの音楽導入方であった。3歳の子どもに音符は必要ない。ピアノ
の奏でる曲想の中で、子どもたちは自由に動物に変身をして、象の歩みや、
ちいさなリス、ウサギの歩みを模倣し教室の中で躍動した。

 講師たちの主たる役割は、ただ待つ事であった。
こころが音や音楽を受けとめ、身体を動かし始める瞬間に出会うことに幾度と
なく感動をした。複合的なリズムを聞き分けて、それぞれの役割を演じはじめ
る子どもたちの感覚に、大人たちが失ってしまっている音楽の源流を垣間見る
思いであった。

 ただ、しばらくの間は、講師にとっては生徒の少なさが悩みの種であったこ
とも確かである。3,4年後には40数名となった生徒数も、
開設当初は、我が娘と、頼み込んで参加してもらった近所のお友達の娘さんの、二人きり。
グループ形成もできない状況ではあったが、私自身はこの手法に十分な手ごた
えを感じていた。

 なによりも、「待つ事」の大切さを教わったような気がする。

 答えをだす速さを競い合う現代。こころが動かなくても、結論を急がねば、
時の流れについてはゆけない世の中だ。
 その中で、我が娘は、一旦就職をしたものの、当時、退職をして、
本当に彼女のこころを動かすものに出会うために「待つ姿勢」を決め込んだようである。
三つ子の魂、百まで。まあ、良しとしようと思うのも親心。

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