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私の耳は貝の殻 海の響きをなつかしむ(ジャン・コクトー:フランスの詩人)  

2023.09.07

■今日のバイブレーション■

     私の耳は貝の殻 海の響きをなつかしむ 
              (ジャン・コクトー:フランスの詩人)       

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●今日のバイブレーションから思い浮かんだ事●
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 ここに一枚の写真がある。つい最近、大切に大切に、ケースに収められて、
届けられた。オホーツクの藍色の海と、それよりは少し淡いが、北国の、雲ひ
とつない青空をバックに、屈託のない笑顔を浮かべつつ砂浜に座り込んでいる
男の写真である。海からの突然の贈り物を、絶対に誰にも渡さないという意志
が、その贈り物を抱きかかえている腕(かいな)にうかがえる。

 「物」は例のイカ釣り船の照明灯である。男は私。

 私は、前回もいったように山系の人間である。
家内は、老後、海の側で暮らしたいというが、私はできれば濃密な緑に包まれ
ていれば、何もいらない。(折り合いをつける機会があるのか、それとも最近
よくある、思わぬ亀裂に帰結するのか判らぬが・・)

 それでも、この写真の中の自分には、ちょっと感動する。
こんな表情をする男だったのか、とあらためて思う。

 そんな時に、このコクトーの言葉を思い出した。

 海が生命の源泉であることは、科学的事実である。
母体の中での、人類の成長過程に、魚から両生類、爬虫類、哺乳類がすべて現れ
ると言う。

 男は、どうもその真実を、この北の海で体感したようだ。
 その生命の海の、上澄み部分である波が、まるで、時を読んでいたかのように、
運び来たった、スペシャルギフト。

 無碍にはできない。

 男はまるで少年のように笑っている。
BGMは勿論、何度も寄せ、返す、北の海の波と、思いがけないほどの柔らかさ
をもつ北の潮風にのって運ばれる、ちょっと昔は少女だった人たちの笑い声。

 これ以上の音楽は無用である。

 そんな音が聞こえてくる一枚の写真がある。

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