彼女は時代を追ったことなんか一度もなかった
2023.11.20
■今日のバイブレーション■
彼女は時代を追ったことなんか一度もなかった
(パリマッチ紙が彼女を評して)
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●今日のバイブレーションから思い浮かんだ事●
我々の年代は、シルビーバルタンと聞くと、なにやら、疼くような興奮を覚
える。歌われるフランス語のなまめかしさと、彼女の可愛さを一時に思い出す
時、まるでイケナイ遊びを発見されそうになったかのように、思わず後ろを振
り返りたくなるような思いにかられる。
「それほどとは思わないね」という声も聞えてきそうだが、少なくとも僕に
とっては、彼女はそういう存在であった。「アイドルを探せ」という名曲を、
彼女を越えて歌いきれる歌手は、当時、まあ、存在しなかったであろう。
そんな彼女も日本的に言うならば還暦との事。5年ぶりにパリでショーを繰
り広げているそうである。「フランスに行きたしと思えど、フランスはあまりに
遠し、せめて新しき背広を着て、きままなる旅にいでてみん・・」と呟いたの
は萩原朔太郎であったか・・
学生の頃、フランス行きを目指して、スナックでアルバイトをしていた時期
がある。決してそれほど芸術にかぶれていたわけではないが、もしかすると、
彼女に触発されて、フランス語のもつ独特な甘さをリアルに体験したいと思っ
たのかも知れない。
結局は、少しずつ溜まり始めていたその稼ぎは、ある事が原因で一夜の酒代に
消えてしまった。翌日の二日酔いの激しさの思い出とともに、今も苦いものが
咽喉元にこみあげてくる思いがするが。
今回のコメントは、フランスのマスコミが彼女自身を評した言葉。
新聞に掲載された彼女の写真は、少しだけ僕の予想を裏切り、ちょっと、僕の
苦手な外国人女性の目付きをしていた。挑発されると僕は逃げ出したくなる。
今も自然体で生きている彼女ではあろうが、「フランスの妖精」と称されてい
た頃にレコード屋の店先に貼られたポスターの中で、うつむき加減に写っていた
彼女の方に僕の気持ちは傾く。