音風景あれこれ ③
2023.02.08
ファド
ポルトガルの民謡といえば、ファド。港で男たちの帰りを待つ歌が多い。
アマリア・ロドリゲスという偉大な歌手にとどめをさすかと思われていたが、
実はそうでもない。今の私の恋人は、ドゥルス・ポンテス。
リチャード・ギア主演の映画「真実の行方」の随所に流れていた、流麗で、
何ともいえず切ない声で歌われる歌の虜になったのが4,5年前。TUTAYAで
借りたレンタルビデオを何度も見直して、エンディング部分で歌手の名前を
発見。今まで聴いた事がない歌手であった。歌のタイトルは「海の歌」
やっと見つけたCDにはその歌がはいっていなかったが、優しい北海道の友
人がその後すぐにみつけて送ってくれた。
これ、いいです!写真に写っている彼女にもべたぼれ。
ファドを聴いて、泣くのは気持ちがいい。
ポルトガル語を理解しようとする気持ちなどさらりとすてて、素直に彼女の
声に染まってみるとわかる。悲しみは、人の心を強くする。
壇一雄という作家はポルトガルを、こよなく愛したそうだ。
「火宅の人」の行間に流れる、静かで深い悲しみの正体は、ファドそのもの
であったような気がする。